好きなもの、好きなこと

好きを言葉にする。残念なアラサー。

あえて薄着をする

 かつてないほど腫れ上がったまぶたなのに平静を装って普段と変わらないふりをしていつも通りを過ごしている。でも胸が不意に苦しくなる。もう何が悲しいかわからない。この気持ちを表現するにふさわしい言葉が見つからない。ただ涙が終わらない。

 

 彼をよく知らない人たちが大騒ぎしている。私だってよく知らないよ。見てきたのはほんの一部だったから。でも20代を彼らとともに過ごしたんだ。聖なる夜を彼氏じゃなくて彼らと何度も過ごしたんだ。

 

 何でもかんでも起きたことを知っている言葉やありふれた現象に当てはめようとしないでよ。そうやって意味のない名前をつけてカテゴライズすると安心するからって自分の知っている世界のひとつにしないでよ。

『なぜ』に必ずしも的確な理由なんてないこともある。簡単に一つに絞ろうとしないでよ。直感的にわかりやすい『〜のせいで』を作らないでよ。関係のない人たちが興味をそそられるような派手で下品な言葉を理由にしないでよ。

 後追い後追い言わないでほしいな。生きる人は生きるし後を追う人は追うんだよ。それほどの判断を誤る人はそんな誰が発したかわからない拡散希望された言葉で引き止められやしないんだから。しょうもない目立ちたい欲のためにこのことを使わないで。すぐに消してくれないかな。

  頼むからそっとしておいてくれないかな。ありふれた定型文を並べてることにすら気づいてないでしょ。たとえSNSで盛り上がってもとても局所的なことなんだよ。このご時世、趣味は多様化していてみんなが好き、みんなが気になることなんてないからさ。これまで知らなかった人が知らなくていいんだから。知らないままでいいから。予測変換で出てくるようなお悔やみ申し上げますならいらないから。それはただの文字の羅列でしかなくて言葉として機能していないから。彼はね、素敵な言葉を選んで美しく表現するのが上手な人なんだ。たとえ間違えたとしてもそれを素直に認めて直そうとする人なんだよ。だからこそ丁寧に言葉を選ばなきゃいけない。

 

 

 あえて薄着をする。寒さが身にしみる。そして私は実感する。生きてるんだって。